製造業用のLED照明:コストを節約して生産性を向上
2017年9月20日
大部分の産業分野の企業にとって、費用の節約は考慮すべき重要案件です。照明の費用が運営予算の大きな割合を占めていなくても、節約を少しずつ積み重ねることで最終的な純利益に差が現れます。 照明のアップグレードは、施設費用および機械費用を軽減するための効果的な方法であるとともに、生産性、安全性、スペースの機能性の改善にもつながります。
所有コスト
照明にかかるコストを考えるとき、初期コストは照明ソリューションのライフサイクルコストのほんの一部であるという認識が大切です。メンテナンスやランプ交換のための費用は各設備の寿命に応じて異なり、エネルギーコストは設備の効率によって決まります。そのため、初期コストは高額であっても、長寿命で効率の良い技術を選べば大きな節約になります。
下の図は、さまざまな技術の平均的なコスト、ワット数、寿命を前提として、各照明ソリューションのコストを15年のサイクルに渡ってグラフで表したものです。どの照明を選定するのかを決定する前に、特定の設備のライフタイムコストを計算してみることが大切です。
LED照明器具は一定の用途において他の技術より初期コストが高額になります。しかし、最も効率が良く、寿命が最も長いのもLEDです。蛍光ランプやHIDランプの方がニーズに合っていると考えるユーザーもいると思いますが、LED技術の進歩のスピードは目を見張るほどで、そうとは限らない場合もあります。
照明の初期コスト
照明ソリューションの初期設備コストには、ハウジング、電気設備 (安定器やドライバなど)、ライトエンジン (ランプやLEDパネルなど) が含まれます。LEDの設備は他の技術より高額になる場合が多く、用途によってはその差がかなりひらくこともあります。
その一方で、産業分野では照明ハウジングの初期コストは環境に応じて異なるとも考えられます。下記で述べられているように、照明によっては産業環境によくある極端な条件に耐えるものもあります。このような防護対策をとることで設備コストが増加しますが、同じ空間にある何かが損傷したり作業員が怪我をするリスクは軽減しますので、長期的に見ると最終的にはコストの節約になります。
照明のアップグレードにはさまざまな種類があり、必要な設備投資もそれに応じて異なります。照明のアップグレードはレトロフィット式かリデザイン式に分類されます。レトロフィット式の場合、既存の照明を高効率の技術で置き換える一方で、既存のハウジング、照明パターン、電気設備はそのまま使用します。一方、リデザイン式では、新しい器具、既存の照明パターンの変更、電気システムの部分的または全体的な再配線が必要になります。
レトロフィット式とリデザイン式の両方で行われるのが、効率の良い技術へのアップグレード、照明数の増加または減少、照明コントロールの導入などです。 いずれの場合も、電気的なカスケードや一体型のコネクタ、多様な取り付け方法に対応した器具を使用すると、照明のアップグレードがはるかに容易になります。
産業分野では、以下のうちいずれかの状況が当てはまる場合、照明システムのリデザインが必要であると考えられます:
- 既存の照明ソリューションの状態が良くないとき
- 既存のソリューションの配光が均一でないとき
- 既存のソリューションの配光がその空間の利用方法に合っていないとき (空間内のデザイン、コンポーネント、室内設備、状態の変化など)
- レトロフィット式のアップグレードでは希望する照明や配光が得られないとき
画像:ワークステーションを適切に照明することは、費用対効果が高い長期的なソリューションとしてエルゴノミクス性および生産性の向上につながります。
運用コスト
効率が少し改善しただけでも、照明ソリューションの全寿命で考えると相当な運用コストの節約になることがあります。さらに、 作業場のみを明るく照らすタスク照明を使用してそれぞれの作業場に合った適切な光のレベルを確保することで、運用コストも節約できます。運用コスト削減の別の方法として、照明が不要なときに減光または消灯する照明コントロールがあります。
発光効率は技術や用途に応じて大きく異なり、スタンダードな60Wの白熱灯では1ワット当たり15ルーメン (lm/W) 未満、最新式のLEDエリア照明では150 lm/W近くになります。
一般に、ルーメン出力が高い照明ほど発光効率も高くなります。 多くの場合、LEDは他の技術より高い効率を発揮しますが、用途によっては高効率の蛍光ランプやHIDランプがLEDと同じぐらい、またはより高い効率を持つことがあります。また、照明システムの入力電圧を下げることも電気代の節約になります。
商用分野または産業分野の企業で消費電力が大幅に削減されるとき、公共料金体系を見直してどのプランが経済的により魅力的であるかを確認することをお勧めします。電気料金の段階的な上昇に直面する大規模な企業では、需要が大きく低下するときに別のプランに切り替えることでかなりの節約となります。料金の段階的な上昇を考慮すると、高効率の技術を用いたときの費用対効果は非常に高くなります。
画像:WLS15は薄型の低出力LEDタスクライトで、収納棚のような狭い空間や可動式の電池駆動用途に最適。
維持費
産業分野では照明ソリューションに関連する維持費を把握しておくことも重要です。定期的にランプを交換して表面を清掃するスケジュールを実行することで、メンテナンスに必要となる総合的な人件費が最終的に抑えられます。照明の外観と均一性を維持することは、作業場での安全性と生産性の確保につながります。
どのような照明ソリューションでも、ランプや安定器またはドライバの故障、ルーメンの段階的な低下、色ずれ、あるいはレンズや反射板の表面に堆積したほこりや汚れによって、時間の経過とともに性能が低下します。劣化のスピードは、システムの動作プロファイル、技術仕様、動作環境の状態に応じて異なります。効率良くスケジュールをたてるには、所定の技術の寿命を推測し、照明システムがいつ頃どのように劣化するものであるのかを把握しておくことが重要です。
画像:ワークステーション用のWLB32 LEDワークステーションライトは長寿命でメンテナンスフリー。
この点では、LED技術はその他の技術とは扱いが異なります。LEDチップはゆっくりと時間をかけて劣化していく中で、光が弱くなり、色特性が変化します。LEDの寿命の定義には基準としてL70が使われます。 つまり、初期出力の少なくとも70パーセントを維持している時間が寿命とされています。 LEDによっては70パーセントに落ちるまでかなりの時間がかかるものがあります。
LED以外の技術では電気コンポーネントやフィラメントが使用されており、それらは必ずある時点で完全に機能しなくなります。そのような製品の定格寿命は、サンプル中の50パーセントのユニットが故障するまでの動作時間数で表されます。LED以外の技術も時間とともにルーメン数が低下していきますが、そのスピードはそれぞれ異なります。
下の表は、各技術の定格寿命の範囲と定格寿命が来たときの減光補償率 (LLD) 値をまとめたものです。
Lighting Technology | Rated Lifetime (Hours) | Lamp Lumen Depreciation (LLD) at end of rated life |
---|---|---|
Lighting Technology Hallogen Incandescent | Rated Lifetime (Hours) 3,000 - 5,000 | Lamp Lumen Depreciation (LLD) at end of rated life 5 percent |
Lighting Technology Linear Flourescent | Rated Lifetime (Hours) 15,000 - 45,000 | Lamp Lumen Depreciation (LLD) at end of rated life 10 percent |
Lighting Technology High Pressure Sodium | Rated Lifetime (Hours) 15,000 - 40,000 | Lamp Lumen Depreciation (LLD) at end of rated life 30 percent |
Lighting Technology LED | Rated Lifetime (Hours) 20,000 - 50,000+ | Lamp Lumen Depreciation (LLD) at end of rated life — |
出典:Rated lifetimes from David L. DiLaura et al.、eds.、ライトニングハンドブック第10版13.7; LLD from Illuminating Engineering Society and InterNational Association of Lighting Management Companies、Recommended Practice for Planned Indoor Lighting Maintenance: IESNA/NALMCO RP-36-03, 2
LEDのL70推定値は50,000時を超えると言われていますが、その推定方法が不確実であることから、それ以上の定格寿命を主張しないようにメーカーに配慮が求められています。また、LEDチップはそれを駆動するドライバよりも長持ちする傾向があります。その場合、ライトエンジンの交換が必要になる前にドライバを交換しなければならなくなります。
照明ソリューションのメンテナンスのスケジュールを考えるとき、それぞれの動作環境での汚れやほこりの程度も考慮する必要があります。ランプに汚れがたまると光源の出力が低下し、配光が歪むことがあります。一方、反射板の表面や壁、天井に汚れがたまると、照明全体が低下することがあります。照明ソリューションが常に最高のレベルで機能するには、定期的な清掃および塗装、全体的なお手入れを欠かさず行うことをお勧めします。
結論
所有コストは照明ソリューションを特定する際の1つの考慮点にすぎません。 詳細について知りたい場合は、ホワイトペーパー「 製造環境での照明に関する考慮事項」をダウンロードしてください。