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  • アンテナの性能 [ホワイトペーパー]

    2010年9月30日

    はじめに

    ワイヤレス技術の新時代において、制御およびオートメーション技術者は、さまざまな環境におけるワイヤレス検出・監視システムの検証と設置をますます求められています。技術者は、ワイヤレスネットワークの持つ柔軟性、信頼性、および設置の簡易性を活用するために、新しい技術と用語の中でも特にワイヤレスシステムに使用されるアンテナについて、十分に理解しておく必要があります。

    アンテナはワイヤレスネットワークの重要なコンポーネントです。適切なアンテナを使用することによって無線ネットワークの範囲と信頼性を最適化することができますが、一方で、誤ったアンテナを使用してしまうと、高性能ワイヤレス装置の機能が停止してしまう原因となります。

    このホワイトペーパーでは、制御およびオートメーション技術者を対象に、設置環境の範囲におけるアンテナの性能の解析に使用される主な性能特性の基礎知識について説明します。メトリクスには次の項目の理解が含まれます。

    • アンテナの性能
    • ゲイン
    • アンテナの種類
    • 見通し線
    • リンクマージンの算出

    アンテナの構造

    各アンテナには、無線信号の範囲と放射パターンを決める固有の特性があります。

    antenna transmitter-receiver signal
    antenna parts diagram

    アンテナとは何か

    アンテナは、高周波電流を電磁波に変換することによって無線信号を伝送し、電磁波を高周波電流に戻すことによって信号を受信します。

    電磁波はそれを伝送するための媒体を必要としないため、アンテナは空気中、宇宙、水中やその他の液体中、さらには限定された距離を固体物質を介して機能することができます。各アンテナには、無線信号の範囲と放射パターンまたは形状を決める固有の特性があります。アンテナの特性においても最も重要な特性はそのゲインです。

    ゲイン

    無線信号の整形をアンテナのゲイン (利得) と呼びます。ノズルが水の流れを調整するのと同じように、アンテナのゲインは特定の方向と放射パターンの無線信号にフォーカスを当てています。アンテナのゲインが高いほど、信号のフォーカス度が高くなります。

    アンテナのゲインはデシベルで測定されます。デシベルは、特定の値と同じ単位の測定値の基底値の対数比です。無線電力に関して言えば、dBmは1ミリワットに比例する電力の比率で、1 mWが0 dBmとなります。

    1つ目の表では、dBmと電力の対数関係を示しています。dBmのわずかな変化が電力に大きな変化を与えています。

    10 dBm減るたびに電力は10の因数で減少し、1 mW未満の電力レベルは負のデシベルになります。2つ目の表では、わずか3 dBmの変化で、システムの電力が半減することを示しています。

    実験では、ゲインが6 dB増加するごとに無線信号範囲が2倍になっています。しがたって、ユニティゲインアンテナ (0 dBゲイン) を使う無線システムが2マイル先に伝送する場合、同じ無線の6 dBアンテナは信号を4マイル先に伝送するということです。

    ほとんどのアンテナの仕様は、ゲインを「dBm」、「dBi」、または「dBd」で表します。これらのデシベル単位が何であるかを理解することは現時点で重要ではありませんが、確かな規則は次の通りです。

     dBm = dBi = dBd + 2.15

    全無線システムのゲインとロスを追加する場合は、各システムコンポーネントで必ず同一のdB単位を使用します。

    範囲を追加するほかに、ゲインを追加することで放射パターンが変化します。放射パターンがどのように変化するかは、アンテナの種類が全方向性であるか指向性であるかによって異なります。

    Adding gain to a radio system does not amplify the signal; the gain focuses the signal. Adding gain to a system usually minimizes wasted energy sent vertically and instead focuses that energy into the horizontal plane.
    dBm Power
    +20 100 mW
    +10 10 mW
    0 1 mW
    -10 100 µW
    -20 10 µW
    -30 1 µW
    -40 100 nW
    -50 10 nW
    -60 1 nW
    -70 100 pW
    dBm Power
    30 1.00 W
    29 794 mW
    28 631 mW
    27 501 mW
    26 398 mW
    25 316 mW
    24 251 mW

    全方向性アンテナ

    その名前が示す通り、全方向性アンテナは均一にすべての方向で無線信号を送受信します。無線に関連する物理により、全方向性アンテナの効果的な信号パターンはドーナツ状で、アンテナはそのドーナツの穴の中心にあります。全方向性アンテナの良い例として、山頂に建てられたラジオ局の送電塔が挙げられます。携帯電話やトランシーバーで使用されるアンテナも全方向性アンテナです。

    ワイヤレスネットワークでは、屋内環境とスター型ネットワークの中心にある装置には、全方向性アンテナが最適ですが、長距離ポイントツーポイント通信では、最善のオプションとは言えません。

    With a star topography network, using an omni-directional antenna on the Gateway ensures all Nodes fall within the antenna radiation pattern. Yagi antennas are best used in lineof-sight radio systems because Yagis focus the radio signal in a specific direction.
    Antenna omni-direction The top view of an omni-directional antenna appears to extend evenly in all directions
    Antenna omni-directional side Viewed from the side, however, omni-directional antennas have more of a doughnut pattern.

    アンテナに非常に近いところには信号が存在しません。ほとんどのダイポール全方向性アンテナには、信号受信に最適な最低距離が設けられています。

    高ゲイン

    ゲインを増加した全方向性アンテナにも、上から見た場合に、円形の放射パターンがあります。ただし横から見た場合、垂直に送られるエネルギーが減少し、その分水平面に送信されるエネルギーが増加します。放射パターンは距離を伸ばして範囲を広げ、水平面に沿った信号に焦点を当てます。

    これにより、2つの無線間の高度の変化に対する、高ゲインの全方向性アンテナの無線感度がより高くなります。

    Antenna omni-directional gain Increasing the gain of omni-directional antennas results in less energy sent vertically and more energy sent horizontally, extending the range.

    指向性 (八木) アンテナ

    発明者に因んで名づけられた八木アンテナは、送信機または受信機のほとんどのエネルギーを一方向に向ける指向性アンテナです。アンテナの放射パターンを光と比較すると、全方向性アンテナは電球のように、球状パターンで均一に無線信号を放射します。一方、指向性アンテナは、懐中電灯のように一方向に信号を放射します。ゲインが高くなるほど、ビームのフォーカスが強くなります。

    八木アンテナは長距離の見通し線通信に理想的です。センサネットワークでは、タンクレベル監視などの屋外用途によく八木アンテナが使用されています。見通し線がない場合、八木アンテナはうまく性能を発揮しません。

    antenna yagi direction A Yagi antenna radiates a signal in one direction.

    高ゲイン八木

    八木アンテナの放射パターンは細いため、無線ネットワークをセットアップする際に高ゲイン八木を正確に向けることが重要となります。無線ネットワーク設置者は、望遠鏡やレーザーサイトなどさまざまなツールを使用して、試行錯誤しながら、八木アンテナを正確に調整できます。

    アンテナのゲインが高いほど、特定の面に沿った信号のフォーカス度が高まります。高ゲインアンテナの使用は、見通し線用途に限る必要があります。

    antenna yagi gain As the Yagi’s gain increases, the radio signal becomes more focused along a specific path.

    見通し線の重要性

    正確な無線伝送は、無線アンテナ間の経路に障害物のない「見通し線」によって決まります。建物や木、または地形などの障害物がアンテナ間の視線を邪魔している場合、そういった障害物は無線信号の伝送も干渉し、マルチパスフェージングや信号減衰の増加につながります。

    マルチパスフェージングは、2つ以上の経路で無線信号が受信機に到達することで起こります。産業においては、受信した信号には、建物、設備、木、または屋外の地形に反射した信号のほかに見通し線信号が含まれる場合があります。信号減衰は、媒体 (この場合は空気) を移動した結果起きる信号強度の衰えです。

    antenna line of sight graphic Line of sight may be preserved, but obstructions in the first lobe of the Fresnel zone may still cause reception problems.

    見通し線に障害物がない場合でも、2つのアンテナを焦点として形成される3次元楕円体のフレネルゾーンに障害物があれば、無線信号を干渉し、マルチパスフェージングを引き起こします。障害物がなくなる十分な高さまでアンテナを上げましょう。見通し線が確保されている場合であっても、フレネルゾーンに障害物がないことが理想です。

    無線ネットワークの基地が、複数の障害物または地形のばらつきがあるエリアに広がって設置されている場合は、確実な性能を得るために、実地調査を行って、最適なアンテナの設置場所、アンテナの取り付けの高さ、および推奨されるゲインを判定してください。

    無線電力とFCC

    無線製品のデータシートを確認する際、注目する必要のある2つの重要な仕様は、無線の伝送電力と受信感度です。

    伝送電力は伝送された信号強度を表し、受信感度は受信機が確実に検知できる最低信号強度を指します。この2つの仕様はアンテナではなく無線固有のもので、dBmまたはミリワットで表されます。

    送信器に関しては、正の数が大きくなるほど強度が高いことを示します。受信器に関しては、数値が小さいほど受信性能が良くなることを示します (受信感度は必ず負の数字です)。伝送電力または受信感度にたった1 dBmのずれがあるだけで、無線の範囲に大きな差が生まれます。

    FCCが打ち立てた規則によると、アンライセンスバンドで動作している無線システムは、その無線システムの電力に限られるとされています。無線システムは、30 dBmの総放射電力または約1ワットを超えてはいけません。

    リンクマージンの算出

    2つの無線が通信している場合、これらはリンクされているといいます。リンクの質または強度はデシベル (dB) で測定されます。技術者が無線信号の飛距離を判定する場合、「リンクマージンの計算式」が使用されます。無線論理によると、0 dBより大きいリンクマージンは強いリンクとなります。実際には、システムエンジニアが快適と感じる、2つの無線間のリンクマージンは、少なくとも6 dBで、よければ10 dBが求められています。

    リンクマージンは、次の計算式を使って算出されます。

    • リンクマージン = (合計システム損失) – (受信器の感度)
    • 合計システム損失 = 送信器のゲイン + 受信器のゲイン + 自由空間損失

    送信器と受信器の総ゲインが正の数であり、合計自由空間損失が負の数であるため、合計システム損失は負の数になります。受信器の感度は負の数です。

    算出されたリンクマージンが10 dBiを超える場合、受信器は無線信号を確実に受信します。算出されたリンクマージンが10 dBi未満である場合、算出に使用されたアンテナはこの環境での使用に適してない可能性があります。FCC規制を超えていない場合は、より高いゲインのアンテナを使用してリンクマージンを再計算することをお勧めします。 

    自由空間損失

    自由空間損失とは、アンテナの種類やその仕様に関係なく、無線信号が大気中を移動する際に自然に減衰する部分を指します。

    無線信号範囲は周波数に逆比例します。周波数が低いほど、範囲がより長くなり、信号はパスロスや干渉による影響を受けにくくなります。自由空間損失の計算式は次のとおりです。

    FSL900MHz = 31.5 + 20 Log d (dはメートル)

    FSL2.4GHz = 40 + 20 Log d (dはメートル)

    総合すると

    送信器または受信器の総ゲインを算出する場合、ケーブル、コネクタ、信号伝搬に貢献するすべてのアイテムの全損失を含めます。

    すべての無線送信器、受信器、アンテナ、ケーブル、およびコネクタのデータシートには、伝送電力、受信感度、アンテナのゲイン、およびケーブル配線の損失が記載されています。コネクタペアには0.5 dBの損失があり、避雷器には0.5から1.5 dBの損失があるかもしれません。ケーブル配線による損失は製造業者によって異なり、通常、ケーブル100フィート当たりで記載されています。

    問題になっている唯一のパラメータは自由空間損失です。システムエンジニアは、自由空間損失の計算式を使って、ポイントツーポイント無線システムの各リンクに十分なリンクマージンがあることを判定することができます。

    バナーのSureCrossシステム

    バナーのSureCross無線装置は、小規模のネットワークで使用する低ゲイン全方向性アンテナから長距離見通し線用途で使用する高ゲイン八木アンテナまで、さまざまなアンテナを使用するように設計されています。すべてのバナーアンテナは、FCC要件と規制を満たしています。

      Basic Specifications Example Applications
    Omni-Directional Transmit and receive equally in all directions. Ideally suited for the center device in a star topology network. With higher gain, transmit less signal vertically and more signal horizontally in all directions.
    Low-gain omni antennas work well in any multipath or industrial environment such as monitoring and signaling bins for parts picking, monitoring automotive manufacturing steps, or regulating environmental conditions such as temperature and humidity.
    Directional

    Transmit and receive best in a single direction. Requires a clear line-of-sight between devices. With high gain, transmit less signal vertically and more signal horizontally in one direction.

    Yagis are best suited to long range, line-of-sight applications such as monitoring tank farms, waste water, or large-scale agricultural production facilities.

    アンテナを設置したら、すべてのゲートウェイ装置に含まれるバナーの実地調査機能を使って、信号強度を簡単に解析できます。実地調査を行うことにより、受信しなかったデータパケット数と受信したデータパケット数のレポートを作成することによって、ゲートウェイとネットワーク内のすべてのノードの間に確立される無線通信リンクを解析します。実地調査の結果にはデータパケットの受信率がパーセント率で記載され、受信した信号の信号強度が示されます。

    加工処理分野の監視・制御用途は限りなく広がっています。タンクレベルからライン圧力まで、温度から電圧まで、SureCrossワイヤレスネットワークは、ほとんどの環境で簡単かつ確実に、導入、拡張、解析、および再導入することができます。

    定義

    Term Definition
    decibel
    A logarithmic ratio between a specific value and a base value of the same unit of measure
    EIRP (effective isotopic radiated power) 
    The effective power found in the main lobe of a transmitter antenna, relative to a 0 dB radiator. EIRP is usually equal to the antenna gain (in dBi) plus the power into that antenna (in dBm).
    free space loss
    The radio signal loss occurring as the signal radiates through free space.
    gain
    Represents how well the antenna focuses the signal power. A 3dB gain antenna doubles the effective transmitting power while every 6 dB doubles the distance the signal travels. Increasing the gain sacrifices the vertical height of the signal for horizontal distance increases. The signal is ‘squashed’ down to concentrate the signal strength along the horizontal plane.
    gateway
    The Sure Cross™ wireless network master communication device used to control and initiate commands to other devices in the radio network.
    latency
    The time delay between the transmission of a data packet and its reception.
    line of sight
    The clear path between radio antennas that is required for reliable communications.
    link margin
    The strength of the radio connection between two wireless devices.
    node
    The Sure Cross wireless network slave device used to provide sensing capability in a remote area.
    system operating margin (also fade margin) 
    The difference between the received signal level (in dBm) and the receiver sensitivity (also in dBm) required for reliable reception. It is recommended that the receiver sensitivity be more than 10 dBm less than the received signal level. For example, if the signal is about -65 dB after traveling through the air and the radio receiver is rated for -85 dB, the operating margin is 20 dB—an excellent margin.

    この記事で取り上げられた製品

    Performanceシリーズのゲートウェイとノード
    Performanceシリーズのゲートウェイとノード

    大規模なエリアでI/Oを伝送するポイントツーマルチポイント (一対多) ネットワークを作成します。入出力のタイプにはディスクリート (ドライ接点、PNP/NPN)、アナログ (0~10 V DC、0~20 mA)、温度 (熱電対およびRTD)、およびパルスカウンタがあります。

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